ー〜時間ー


ここ早御坂家の大浴場ではなぜかメルザことメイドネコロイドが見張りとして
立っていた。
そういま、入浴中の歌音がそうさせているのだ。
理由はいうまでもなくケイが入ってこないように。

その日はあまりにいろんな事があったため、歌音もケイも学園にはいかず家で
ゆっくりしていた。

広い浴槽の中で歌音は身体を伸ばし瞳を閉じて、今日おきた事件をゆっくりと
思い起こしていた。

「私にあんな力があったなんて・・・・・」

朝の登校時に獣のようなグルーとシスター服すがたのミップに突然
襲われたあの事件・・・。

ケイとなにかかかわりがあると思われるこの二人の有無を言わせぬその攻撃で
すさまじい体術をマスターしているケイの必殺の攻撃すら通じなかった事を・・・

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形勢は一気に不利になっているように見えた、すでにケイの動きはグルーの攻撃を
かわすだけで精一杯になっていたのだ。

それでもグルーにはケイの必殺が決まっている、ダメージはあるのだがそのパワーを
半減させるには至っていない。

いまだ、グルーの左右の手の攻撃でコンクリートの建造物さええぐり取られるパワーを持っている。
かろうじてケイがその攻撃をよけているが、それもいつまでもつのかわからない。

歌音はそれを見て激しく動揺していた、なんとかならないかと必死で考えてもいた。
だが答えは見つからない。

そして身体が動いていた。

我を忘れた歌音の行動はそこにいた全ての人間の予想に反していた、それは
ケイにも意外であった。

なんと歌音は全力で走っていたそれもグルーに向かって。

「なっ・・・歌音ちゃん?!・・」
歌音の身体が不思議な光りに包まれる、ケイの身体を包んだ光とも違うもっと激しい
それでいて柔らかい光り・・・・。

「グッ?」
グルーはその行動にすぐに反応し攻撃の態勢を整えていた。

「イヤァアァァァァ!!!]
歌音は走った勢いのまま飛蹴りに移る、まったく迷いのないまっすぐな蹴り。
グルーも同時に渾身の右をはなつ。

カッ!!
激しい爆発のように光がほとばしる。
グルーのパンチは中を切っていた、歌音の輝くキックがまるで狙ったように
グルーの頭部に決まっている。
その瞬間で時間が止まっているようだった。

立っていたグルーは今度こそ崩れるように倒れこんだ。

「グ・・グルーが・・?そんなバカなことが・・・あの子一体?これがあの子のベアルドの力?」

ミップことシスター服の少女はグルーに駆け寄ると両手を頭部にかざし、青い光りが輝く
しばらくするとグルーの意識が戻ったようだった。

「ケイ! 今度会う時は・・必ず・・・」
そこまで言うとまるで消えるようにその場から姿を消してしまった。

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ゆっくりと湯船に浸かったおかげで、すっかり身体の緊張は解けていた。

自分のどこからあの光りやエネルギーが出たのかはわからないがそれのせいで疲れた
とかそういった事はなかったのが不思議ではあった。
それよりもその事件自体に疲れを感じていたのは事実である。

脱衣場に歌音が移ると話し声が聞こえた。

「やっぱり・・・」
そうメルザがいたのが幸いだったのだ、案の定ケイが浴場に入ろうとして
メルザに止められていたのだ。

「困りますケイさん、お嬢様が入ってる間は待っていただかないと・・。」
「どうして?私も怪我までして疲れてるのは同じでしょ、いっしょに入ってなにがいけないの」

メルザはあまり反論するのもどうかと言葉を濁して、ひきとめていた。

「怪我してるならお風呂なんかに入らなくて、じっとしてなさいよ」
バスタオルをまいた歌音が入り口際でケイに話しかける。

「ほらぁ、もう出ちゃったじゃない・・・」
ケイはほんとうにがっかりした様子で愚痴をこぼす。

「付きまとわない約束だったのもう忘れたの?」
「そんな約束あったっけ?あんまり記憶力よくないのよ」

「・・・どちらにしてももう出るからスキなだけ湯船に浸かるといいわね」
「そうするわ・・・では・・」  ガララ・・・
「メルザ・・」
無造作にケイは脱衣場へと入ろうとするが歌音の一言でガッシとつかまれ
浴室から離されるケイであった。

「ちょっと・・・メルザ離しなさい!ロボット三原則をしらないな?」
「・・・・・」
「ちょっと・・ほら・・あれ・・」
なにを言っても無駄ではあるがなんとか説得しようとするケイの言葉が少しずつ離れて聞こえる。

これから毎日これが続くのかと ケイが何故狙われたかなどの心配よりもそっちのほうが
心配な歌音だった。

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